こんばんは。C.schoolの関屋です。
10月27日(日)、横浜にある学習塾「イルム元町スクール」へ授業の見学へお邪魔してきました。今日現地で見させて頂いたのは、「イルム元町スクール」が通常の学習授業とは別に行われている「イルムアカデミア」という位置づけの特別授業。今回のテーマは恐竜の復元画をテーマとした「古生物復元画ワークショップ」。講師は、古生物復元画家・イラストレーターであり大阪芸術大学で准教授も務める小田隆先生です。
C.schoolで通常行っている「Dプロ」とも近い部分があり、なにか学べる部分があるのでは?と思い、見識は全くない中であったものの突然の連絡。すぐにご返信をいただき、見学OKのご回答を頂けたため、早速現地の横浜へと行ってきました。
「イルム元町スクール」とは
今日の見学の内容に入る前に、本日伺った「イルム元町スクール」について少しだけご説明します。「イルム元町スクール」は小中学生を対象とした学習塾で、私たちC.schoolと同じように高校受験を見据えた運営をされています。また、生徒の学力向上に対して学習塾としてコミットをしている一方、それだけでなく「イルムアカデミア」として様々な外部講師を招いて特別授業を行われています。『教育からギフトへ』というコンセプトを持っている「イルム元町スクール」では、様々な専門分野で活躍する方をスクールに招き、多様な学びの機会を提供しています。
今回、私が「イルム元町スクール」を知ったきっかけは塾の業界紙におけるインタビュー記事。「イルム元町スクール」を運営する「LIFE Inc.」甲斐代表の言葉を見て、日々の学習による学力向上+Dプロによる非認知能力等の向上に取り組んでいるC.schoolと、カリキュラムの方針として重なる部分を感じて見学のお願いを申し入れました。
どんな授業だったか
今日見学した小田隆先生による「古生物復元画ワークショップ」は、主に小学生を対象とした特別授業。”主に”というのは、小学生だけに限定せず大人でも参加OK。『恐竜』と聞くと、子どもだけではなく大人でもわくわくしてしまうようなロマン溢れるもの。参加者の方のには、子どもは都合が悪くて来れなかったけれどもお父さんだけで参加した、という方などもいらっしゃっていました。
小田隆先生は、”古生物復元画家”のエキスパートとしてプロフェッショナルと呼べる方。新しく発掘された恐竜の化石などを、研究者の方とともに画としてリアルな姿を表現されています。(恐竜だけでなく、動物や人なども”美術解剖図”という分野として、描かれているそうです)
そんな小田先生のもと行われる授業は、子どもたちが自分自身で恐竜の復元画を描いてみようというもの。簡単なレクチャーを受けたあとは、ひたすら約二時間半の個人ワーク。集中が切れてしまいそうな長時間の授業であったものの、子どもたちは一人が夢中になって作業を続け、なんと参加した全員が自分なりの復元画を最後まで完成させていました。
授業を見学して感じたこと
あっという間に終わってしまった計3時間の授業。子どもたちはみな自分なりに描いた復元画を手にとても嬉しそうな表情を見せていました。全体としての雰囲気も暖かく、そこには優しい時間が流れていました。 感じたことや、C.schoolでも参考にできる学びはたくさんありましたが、その中でも特に印象的だったことをいくつか記録として挙げておきたいと思います。
①とにかく「楽しい」ということ
今回の授業を見学して、一番感じ取ったのは子どもたちがみなキラキラして夢中になり、楽しそうに授業に参加している姿。子どもだけでなく、授業に参加している大人たちも含めてみな楽しそうな姿が印象的でした。その背景は、一つは「恐竜」というテーマが既にわくわくするということ。でも、ただそれだけだと長時間の授業を通して子どもたちが集中し続けることはできなかったかもしれません。一方的な講義的なレクチャーを限定的な時間に押さえていること、作業の内容を一度にすべてまとめるのでなくいくつかに分断し、その間でレクチャーとなる講義を挟むことなど、授業進行の上での細かい工夫が感じられました。また、子ども達が作業をしている横では、壁に対して人の解剖図が描かれているような姿も。こうした時に息抜きとなる要素なども含めて、一つ一つの設計が子どもたちの集中を保ち、それが結果として「楽しい」という感覚をあくまで自然な形として膨らませていたように感じます。
こうした様々な工夫も設計した上で、子どもたちが楽しんで授業に主体的に参加してくれる授業、こういったことを私たちもより意識として大切にしていきたいなと思いました。
②「正解がない」ということ
今回の授業の中で一つ軸になっていたのが、「正解はない」ということ。どんな恐竜の画が正解なのか、そういった案内などは(目の位置など)最低限の部分を除いてほとんどなく、恐竜の肌の色合いなど多くの部分が子どもたちの自由に委ねられていました。また、小田先生の言葉にあったのが、そもそも恐竜の画として「これが正解」というもの自体が学術的にも定められないということ。作業(ワーク)として正解がないだけなく、そもそもそのテーマ自体が正解が定められていないものということで、どんな色で恐竜を表現するかは完全なる一人一人の自由です。
何かを作る時や決める時には、大人であってもなんとなく”正解”を求めてしまうもの。もしかすると、大人であるとより”正解”を求めてしまう意識が良くも悪くも高まってしまうこともあるのかもしれません。
一方で、子どもたちにとって、それからもちろん大人にとっても、予め設定された”正解”に対して答えを導くのでなく、自分なりの表現をすること、それを自信をもって最後までやりきる、ということはとても大事なことだと思います。
「正解がない」ことを考え、子どもたちが手を動かしていくためには、そもそもの”問い”の作り方や、「これは正解はないんだ」ということを子どもたちに明示的に示すこと(間違えてもいいんだという環境を作ること)、一つ一つの表現を認めて合っていくことなど、授業を企画する者の立場としては、実は「自由」を支える様々な工夫が大切になってくると思います。そういったことを、より改めて実感する機会となりました。
③”プロフェッショナル”が伝えるということ
授業を行われていた小田先生は、恐竜の復元画の”プロフェッショナル”と呼べる方でした。
今回の授業に参加して、「すごくいい授業」「自分もやろう」と思ってそれを同じままC.schoolでそのまま再現しようと思っても、きっと再現できることと再現できないことがあると思います。もしかしたら、表面的な部分だけであれば、恐竜の画を子どもたちに書いてもらって、それらしいワークを模すことはできるかもしれません。ただ、子どもたちの関心を自然と沸き立たせる、恐竜に対する深い知見や芸術的な画、一つ一つの言葉の表現。それから生まれる説得力。そうしたものは自分で再現するには当然ながら限界があり、自分自身にはできないことだなと感じたことが正直です。
ただ、授業を作り、教師である人間が出来ることが限られているのは当然のこと。自分だけでは子どもたちに届けきれない分野があることは事実としてあるので、それを受け入れた上で、自分に何ができるかを考えるべき。そうしたことをおっしゃっていた 「イルム元町スクール」 代表の甲斐さんの言葉がとても印象的でした。
自分自信が誰かの力を借りずに直接伝えられること、もしくは指導できることは最大限の力を注いで行っていく。それは前提とした上で、スキルや知識など、様々な意味で自分にできること/できないことの境界線を意識し、「できないけど、子どもたちに価値があると信じられること」をどうやって具体的な形にしていくのか、それをあきらめずに考える大切さを改めて考える機会となりました。
今回、満員の中にも関わらず授業の見学を受け入れてくださり、またお疲れの中にも関わらず授業の終了後の時間も、様々なご意見を聞かせて頂く機会となりました。小田先生、甲斐さん、本当にありがとうございました。
ただ、私が「勉強しました!」となって帰っても意味がない。まさにその言葉の通りだと思うので、C.schoolでも同じような質の高さを持った学びの機会を、子供たちに対して提供していけるよう、今回のことを漏れなく活用させて頂きたいと思います!
※本記事では生徒の顔が明らかに映っている写真なども多くありますが、写真の掲載に関しては参加者の方々から参加にあたりすべて事前承諾を頂けているものとなっています。
関屋